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ガラスの靴がはけなくても

第7章 春の風



どうしてわざわざって思ったけど、もうなんとなく予想はついたしそれ以上触れる気にはならなかった。

と言うか、正直ここへきてワインが回ってきていて考えるのが面倒になったってのが本当の所。


なのに、


「藤野、大丈夫か?気分悪いんじゃないか?」


不機嫌な顔してたくせにすぐに私の変化を見抜いて優しくされるから、また部長のことを考えざるを得なくさせる。


「大丈夫です。もう、今は水飲んでますし!」


そう言って、水のグラスを部長の前に掲げて酔ってませんよアピール。


「ならいい。あの時みたいに記憶だけはなくすなよ」


意地悪く言われた言葉に色々な意味でドキドキした。
顔が赤くなったのはお酒で分からなければいいけれど、どうせ部長は分かってわざと言っているんだろうから私の動揺は隠しようがない。



今でもこんなにいっぱいいっぱいになっちゃうのに自分の気持ちを伝えるなんて、やっぱり私には難易度が高過ぎます。香織さん。

そんなやり取りをみて私に意味ありげな笑みを向けてくるけれど、助けてくれるわけもなく。

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