ガラスの靴がはけなくても
第9章 彼の秘密
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恥ずかしいと騒ぎながらも二人でシャワーを浴びて
、遅いお昼ご飯を食べ終わると色々な話をした。
好きな食べ物に好きな音楽。家族構成。趣味。
3年も顔を合わせていたのに、本当にお互いのことを何も知らなくって。それを少し寂しく思ったけど、これから知っていく楽しみの方が大きい。ひとつずつ私の知らない彼を教えて貰おう。
私のことを知って欲しいように彼のことももっと知りたい。
……だからこそ、どうしても聞いておきたいことがあった。
今までの私だったら、相手にどう思われるかを気にして絶対に口にしなかっただろうけど。
慶司さんならどんな私でも受け入れてくれるって信じれるから。
「あの……」
でも、やっぱり言いづらくてもじもじと煮え切らない私に、首をかしげて視線を向ける。
「あの、気を悪くしないで下さいね?その、ちょっとだけ気になることがあって…」
「うん?どうした?」
声色は優しくて、聞いてくれるんだって安心する。
「ずっと前になんですけど、噂で慶司さんがうちの会社の女子社員を…その、いろいろ…」
ごにょごにょと語尾を小さくしてしまったけれど、彼には何が言いたいのか伝わったらしい。
「あ~…俺が会社の女食いまくってるってやつ?」
そう。たったひとつだけ引っかってた昔に聞いた"噂話"。
聞いたその時はなんとも思っていなかったのに、自分が好きになった途端に気になってモヤモヤして。すごく勝手だけど、これからもそんな気持ちを持っているのは嫌だから聞いておきたかった。
それにこくりと頷くと、ちょっと気まずそうに私が聞きたかったことを教えてくれた。
「正直、昔は来るもの拒まずのとこもあったからそういう関係になったヒトも0ではない」
自分で聞いておいてちょっとだけ胸がチクリと痛んだ。私にだって別に付き合ってる人がいたし、慶司さんにだってそういう人がいたっておかしくないのに。
「でも俺もさすがに自分の勤務先だからな。噂程に手を出したりしてないよ」
苦笑いを浮かべて、ぽんぽんと頭を軽く叩くと肩を寄せられる。そのまま彼の腰に手を回して抱きついた。