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ガラスの靴がはけなくても

第9章 彼の秘密


期間は短いにしろ付き合っていた人としか、そういう関係にはなっていないことを教えてくれて。
私が勝手に不安に思ったことなのに、それを拭うようにきちんと説明をしてくれる。
それを面倒に思わずに応えてくれるって分かってたから、私も勝手だと思ったことでも話せるんだ。



「でも、そんな噂が流れるようになったのは莉乃が入社してから」


「え?」


「それまで誘えば飯くらいなら顔を出してたのに、それにすら行かなくなったからだろうな。弄ばれただのなんだの言われたのから始まったんだと思う」


女の噂って怖いなって言う彼の顔を見ている私はまだ話が飲み込めてない。



「俺が前からお前のこと見てたって言っただろ?」


「……はい」


「まだ俺が昇格する前で一般だったとき、俺のチームで一緒だったことがあるだろ?覚えてるか?ロイヤルスターホテルの案件」


「もちろん覚えてます。私が初めてチームに入った仕事だったから特に」


輸入家具メーカーのうちの会社に就職して初めての仕事だった。一般向けの家具を売る店舗の経営と合わせて、ホテルや企業向けの家具やインテリアを扱う仕事もある。
新建するロイヤルスターホテルの中の一部をうちのものを入れるということで発足されたチーム。


初めてのことで分からないことばかりだったけど、忙しい中で新卒の私にも丁寧に指導をしてくれた先輩たち。



「その時からだよ」



え?と顔をあげるといつもな強気で自信に満ちた笑顔じゃなくて。少し眉を下げて照れ臭そうに笑っていた。


「一生懸命頑張る姿に気が付いたらいつも目で追ってた」



その笑顔と言葉に今の今まで嫉妬でざわついていた胸が、また違う気持ちで締め付けられた。



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