ガラスの靴がはけなくても
第9章 彼の秘密
「あっ、慶司さん」
「ん?」
「いつもいい匂いがするんですけど香水ですか?」
「うん?俺は仕事上外に出ることも多いから好き嫌いが分かれる香水はつけないようにしてるけどなぁ」
「えーっと、じゃなんだろ?確かに近くじゃないと感じないくらいの香りだし。シトラス系の…」
「あぁ、それなら風呂上がりにつけてるボディーローションだろうな」
「へぇ!男性でもちゃんとケアするんですね!」
「姉貴がそこのバスグッツのメーカーに勤めてるから定期的に送られてくるんだよ。男でもケアしろって」
「そうなんですね。いいお姉さんじゃないですか。私あの香り大好きですよ」
「そうか、なら余ってるやつがあるから今度持ってこようか?」
「えっ、い、いえ大丈夫です!」
「なんで赤くなってるんだよ。意味がわからないやつだな」
「…自分からもあの香りが漂ってたら落ち着かないよ…」
「なんか言ったか?」
「いいえ、何も言ってません!」
ーーー初めてシトラスの香りを感じた時から、この恋は始まっていた。