ガラスの靴がはけなくても
第10章 ガラスの靴がはけなくても
「莉乃はどうなの?色々と順調?」
「順調と言えば順調ですけど…。最近お互いに忙しくってあまり会えてないですねぇ」
「付き合ったばかりで楽しい時なのに残念ね」
「まぁでも、会社で毎日顔は合わせますからね」
今年度から一部一課しかなかった企画部に二課が設けられた。
社内恋愛は自由だけど、同じ部署の場合は左遷されることもあったりして。
それもあって、希望を出して二課へと異動した。
慶司さんも通常の仕事に加えて、二課の立ち上げもあるから本当に寝る間も惜しんで働いている感じだ。
「二課の人達もいつも遅くまで残ってますよね。莉乃さんも無理しちゃだめですよ」
亜依ちゃんも心配したように私に声をかけてくれて。
今まで与えられたことだけをこなしていればそれでいいって思ってた。だけど、社会人四年目の今年は、これまでより少しだけ踏み出して自分から発言して行動を起こしていこうって決めたんだ。
「ありがとう。でも、今楽しいよ!前より外回りに連れていってもらう機会も増えたし。新しいこと始めるのもたまにはいいね」
「莉乃、なんかちょっと変わったわね」
香織さんもほっぺをつついて嫌がらせは忘れないけど、優しい笑顔を向けてくれる。
私の周りにいてくれる気の合う友人に、やりがいのある仕事、自分を認めてくれる恋人。
側にある当たり前の日々を幸せに感じる。