ガラスの靴がはけなくても
第2章 キスの温度
「おはようございます」
「おはよー!ん?莉乃かわいー!!イメチェン?」
「まぁ、そんなとこです」
入社した時から仲良くしてくれてる二つ年上の香織さん。朝からテンションが高いのにはもう馴れた。
失恋したら髪を切るって単純かもしれないけれど、案外気持ちもサッパリする。ショートにする勇気はなかったけど胸の下まであった髪を20センチ短くした。
あの日が金曜日で良かった。
心の方もなんとか立て直すことが出来たし、見た目なんか前よりパワーアップしたんだから。美容院だけじゃなくて、エステだって、ネイルサロンにだって行ってやった。
落ち込んでばっかりはいられない。
「あーー!ない!!」
「もうっ!なんなんですか?ビックリするじゃないですかっ」
キンとする声に顔を歪めた。
美人なんだからそうやって大きな声を出して騒ぐのはやめて欲しい。