ガラスの靴がはけなくても
第2章 キスの温度
そんな騒がしい香織さんは、私の左手を取り自分の目の前にかざすと、穴が空くんじゃないかってほどに見ている。
「はーん…。そう言うこと、ね」
そこにあったはずの恋人の証がなくなっていることに気付いたらしい。
私の手を離すと、ポンと肩を叩き心配そうに顔をのぞき込む。
「話はゆっくり聞いてあげる」
「香織さん…」
「でも、その前に」
ニタリと悪魔のような笑みを私に向ける。
ちょっ…え?心配してくれてるんだよね…!?
「待っ……」
「みんなー!莉乃が男と別れたんだって!合コンするわよー!」
「香織さん!!」
慌てて口を塞ぐけど、時既に遅し。
「なんてことを大声で!」
穴があったら入りたい!
一日にして自分の部署ほぼ全員に失恋が知られるなんて…!!