ガラスの靴がはけなくても
第2章 キスの温度
大体、私も私だけど、部長だって何だったわけ?!
部下にいきなり手を出すなんて!
部長が何を思ってあんなことしたのか分かんない。
上司としてしか見てなかった人なのに、急に男を出されて意識しないわけがない。
こぼした茶葉を片付けながら俯く私は、顔を赤くしていた。
だって、思い出すなって方が無理だもん。
意識したくなくったって、意識せずにはいられない。
「藤野」
「何でしょうか?」
「顔あげろ。上司に向かって失礼なやつだな」
「か、片付けてるんですっ」
「後にしてこっち向け」
「や、ちょっ…近い、です」
おかしいでしょ!この距離感!!
段々と壁際に追いやられた私。その壁に手をつき私を見下ろしているであろう部長。
こんなに近くで部長の顔を真顔で見れる自信がない。