ガラスの靴がはけなくても
第3章 理性と本能
ガヤガヤと騒がしい店内。
各々が好きなように飲み食いし、喋り、笑っていて、私達の会話なんて誰も聞いてないかも知れないけど、なんだか落ち着かない。
「そんな困った顔しないで下さい」
「だって…ねぇ」
ダメだ。冗談に笑い飛ばしてしまえばいいのに、こんな経験が少ない私はとっさに上手く流せることが出来るスキルを持ち合わせてない。
香織さん…これって合コンじゃないはずですよね?
飲み会でもこんなにてんてこ舞いなのに、出会いを求める合コンなんてもっと無理だと実感した。
こんなに男の人に慣れてないのかと、そんな自分自身に驚きと悲しみを感じた。確かに昔から男の人と接する機会は多くはなかったけど。
恨めしい思いで香織さんを見つめるが、ちゃっかり人気がある新入社員の隣をゲットした彼女が気付く訳もなく。
「ぶっ…くく」
突然笑い出す澤村君にも、もう私はどうしたらいいのか分からない。