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ガラスの靴がはけなくても

第3章 理性と本能


あっという間にみんなに囲まれた部長。
女子社員だけでなく男子社員も周りには集まっていて、改めてどれだけ慕われているのかを実感する。

だけど、私はそんな部長の親しみやすさよりも存在感に圧迫される。
毎日顔を合わせているんだから、いい加減馴れてもいいものも日に日に居心地の悪さと息苦しさは増してきていて。

原因は間違いなく部長なのに、当の本人はいつもと変わらず涼しい顔で意識してるのは私ばかりでやるせない気持ちになる。

ずっとすっきりしないモヤモヤがあって。胸の中に霧がかってる感じがする。




「藤野さん!」


「え?」


「え?じゃないですよ。聞いてました?俺の話」


「あ~…はは。ごめん」


ついついぼーっとしてしまって一瞬澤村君の存在を忘れていたらしい。
ブスッと拗ねた様な顔する彼に私は愛想笑い。


「俺、今口説いてるんですけど。とりあえず脈がないことは分かったんで携帯の番号交換して下さい」


「あっ、うん。電話番号ね。番号って……はい?」




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