ガラスの靴がはけなくても
第5章 赤のしるし
あまりにも綺麗な寝顔だったから。
顔にかかる髪すらも艶やかで。
触れてみたいって気持ちに負けてしまった、その瞬間ーー
「誰がムカつくって?」
その髪に触れた手を捕まれた。
「きゃっ!ぶぶぶちょ…!すみませんごめんなさい申し訳ありません!」
まさか起きてるなんて…!!
「なにそれ。謝るってことはムカつくって言葉を肯定してんだな?」
「いえ!そう言うわけでは!」
「俺の寝込み襲おうとしたくせに生意気」
かっと顔に血が上っていくのを感じた。
断じて寝込みを襲おうとしたわけではない。
だけど触れたいって思ったことに間違いはなくって。
意地悪く笑うその瞳にそれも見透かされたような気分になった。