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夢現、

第1章 夢でもいいから

(.゚ー゚o[side ⓝ]o

『…そんなんだから、こうしたくなる。』

ほんとは、そんな大袈裟に
付けてる訳じゃなかったんだけど。
口の端と頬に、ちょっと跳ねたのかな、くらいの汚れ。

さっきの話をしている間に、すっかり乾いて
柔らかな肌にこびりついたソースを指先で取ろうとしたけど、
指が上手く動かなくて、拭ってあげられなかった。

まどろっこしくなってしまった。
同時に、上手く動かない指で触れた翔さんの
頬ったら、柔らかくて、温かくて。

椅子ががたん、と音を立てて倒れた。
机に乗りかかるようにして、翔さんに近づいて
肩を引き寄せ、唇で頬に優しく噛みついた。

S「── っ、ニノ 、」

当惑したような翔さんの声が私を呼ぶ。
構わず今度は舌で、その頬と口端のソースを
舐めとってやる。

翔さんが息を呑んだのが、息遣いで分かった。

舐めっとったミートソースはやっぱり美味しくて、
だけど心なしか、さっきちゃんと食べた時よりも
しょっぱかったような感じ。
翔さんの肌の味が混ざったからかな?
なんて変態チックなことを考える。

『ほんとに、無防備なんだから。』

仕事は綿密に計画を立てて隙なくこなすくせに、
こういうとこがあるから、目が離せない。
相変わらず当惑顔の翔さんにゆっくりと告げる。

『こんな夜中にゴハン作って、
おまけに相談に乗って差し上げた報酬、
頂いてもいいですよね?』

ほんとは微塵もそんなこと思ってないけど。
寧ろそんなの、口実でしかないんだけど。

翔さんは一瞬、逡巡するように
視線を泳がせて、また私に焦点を合わせて、
小さく息を吐いた。

S「…断る権限なんて、最初からないんでしょ?」

まぁ、そうですね。
もうここまで来たら、拒まれようが何言われようが
私の中に渦巻いてしまった欲求は収まりません。

『ご名答ですね』

その一言を聞くと、
諦めと少しの期待が入り混じったような表情で、
翔さんはこちらを見る。

その視線に答える代わりに、もう一度
翔さんの口端に唇を押し当てて、
今度は唾液をたっぷり絡ませた舌で
いやらしく音を立ててそこを舐めた。

さっきよりも、翔さんの頬が熱くなる。
ちゃんと呼応してくれる彼の身体が
愛おしくて堪らなくなる。


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