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夢現、

第1章 夢でもいいから

(`・З・´o[side ⓢ]o

ニノの濡れた熱い舌が、俺の頬を嬲る。
その感触に頭の芯がぼうっとして、
思わず目を閉じて、混濁しそうななけなしの
意識を手繰り寄せようとする。

けど、無駄だった。
いつの間にかと耳元へと移った赤い舌に、
耳朶から、耳介の輪郭、そして小さな穴まで
全て貪られてしまう。

『──は、に、ニノ、それ…やばいって…』

そう力無げに抵抗を試みるも、

N「…嫌ですか?だったら、やめましょうか。」

本当は、答えなんか一つしか
受け容れないくせに。
そうして態と耳元で、ニノはいつもの
ハイトーンボイスからは想像もつかないような
低く妖艶な声で囁く。

『──っ、……、じゃ、な…け、ど』

耳元にかかった吐息と、いつもの口調に
輪をかけて意地悪なその言葉に、
途切れ途切れの応答をするのがやっとだった。
なのに、

N「んー…ちゃんと聴こえるように
言ってもらわないと、私だって
どうするか決めかねてしまいますよ」

嘘つけ。
俺がどう答えたって、その先は決まってるくせに。
そうやって羞恥心を虐めるニノは、
やっぱり子犬の皮を被った狡猾な悪魔だ。

『───嫌じゃないけど、って、言ったの』

半ばぶっきらぼうにそう告げるや否や、
恥ずかしくてニノを見ることが
できなくて、顔を覆った。
そうしていたのも束の間で、

N「よく言えました。で、その先は?」

『…その先?』

N「“嫌じゃないけど”、何なんです?」

とことん鬼畜である。
もう、今晩はこの子犬の餌食確定かな…。

『…だから、───続けてよ。』

蚊の鳴くような声でそう言うと、
またニノがくつくつと笑う。
こちとら、羞恥心と格闘してようやく
言えた一言なのに…。

N「だって、あんまり可愛いものだから。」

またしても俺の心情を
知らない内に汲み取ったらしいニノは、
意地悪な笑みを浮かべながら、
俺のヨレたYシャツのボタンをひとつずつ
その器用な指先で弾くように外していった。

そして耳元から首筋に柔らかな唇を這わせつつ、
こう言った。

N「──私だけの、可愛い翔さん。」


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