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夢現、

第1章 夢でもいいから

(.゚ー゚o[side ⓝ]o

2人の唇の間を生温い水が伝う。
こぽ、と音を立てながら口中から流れていく水の
感触が心地いい。

『ん──…、ふ、』

口の中にあった水をほとんど翔さんに注ぎ込み
ぷは、と唇を離した。
翔さんはどぎまぎした表情で、
頬を膨らませたままだ。

『────… 飲んで、』

そう告げると、戸惑ったような目をして、
やがて口の中のものをこくりと飲み下した。
出っ張った喉仏が上下する様は妙にそそられる。

S「…ほんと、突拍子もないんだから」

口元を手の甲で拭いながら、
呆れたように言う翔さん。
ようやく快感の波も鎮まり、
人心地ついたようだ。

『…でも、嫌だって言わなかったじゃないですか。』

言いながら、余った袖で
額の玉の汗を拭ってやる。
「やめなよ汚いって」と拒みながらも、
その表情は満更でもなさそうで、
笑みさえ浮かんでいる。

S「…だってさ、言えないじゃん?」

今度は眉を寄せて上目遣いでこちらを見遣る。
表情の変化に忙しい人だ。
首を傾げると、参ったなという風に
唇を舐める。

S「…さっきさ、俺、
「やっぱまだ死にたくない!」みたいな
こと言って目ぇ覚めたから」

黙って首肯する。それは背中で聞いていたから。
心臓に悪かったけれど、今はそれは
言わないでおくことにする。

S「だから、何かヘンなこと言って
コレが終わっちゃったら、
もし、夢だったら、そんなの生殺しじゃん。
せっかく、ニノと…ね、してるのにさ、」

そう言うと、照れくさそうに
ぽりぽりと頭の後ろを掻く。

…ばか翔さん。そんなことで。

『じゃあ、嫌じゃなかった、
寧ろもっともっとして欲しかった、ってことで
よろしいんですね?』

S「あからさまに言わないでよ…」

おどけるように口元を歪める彼。
そんなこと言われて、そんな顔されて、
私が大人しく「そっか」って言って
終わると思いますか?

ダボついたパーカーの袖を噛む。
今夜は、優しくなんて抱けないからね。
そんな私の心中を知る由もない彼は、
優しい眼差しでこちらを見ている。

『明日、腰痛覚悟でお願いしますね。
あとトイレも近くなるかもしれませんね。』

え、と間抜けた声を上げる前に、
その口を塞いだ。

その夢、叶えてあげますよ、翔さん。

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