半社会人(仲村慶彦の憂鬱な日々社会人編)
第46章 充実してるかも
ストライカーはオレたちにプロになってみないか?と言ってきたが、オレは元々プロになるつもりはなく、25才という年齢もあってか、それは断った。
しかし、弾丸はボクシングファンだったという事もあり、プロのライセンスを取得するため、ほぼ毎日ジムに通うようになった。
素直な性格の弾丸はストライカーの教えもあってか、オレを遥かに上回る程の上達ぶりを見せ、半年後にはスパーリングで他の練習生を圧倒する程のボクシングセンスを見せつけた。
「オレ、絶対にプロになる!そして必ずチャンピオンになってやる!」
弾丸の並々ならぬ意志が伝わる。
弾丸が目指す階級はフェザー級で、約55㎏から約57㎏の間だ。
あ、弾丸は佐野 圭佑(さの けいすけ)というのが本名らしい。
まさかジムで「弾丸」なんてハンドルネームで言えないよなw
もはやこの時点で、【裏切りのジョニー】【蒼い弾丸】【悲しみのストライカー】というこっ恥ずかしいハンネは消え失せたww
オレはストライカーを「橋本さん」と呼び、弾丸を「ケースケ」と呼ぶようになった。
何だかこの二人と出会って一年以上経つが、ハンネで呼ばずに本名で呼び合うようになってから、本当の付き合いが出来たような気がする。
ストライカーはもうすぐパパになる予定だ。
この前まで童貞だったクセにパパになるとはwww
弾丸はプロテストに合格する事しか頭になく、女っ気無しのストイックな生活を続けている。
オレは…オレは相変わらずのダメダメな人間でまだ童貞だ。
だけど、ボクシングをやるようになって、童貞がどうのこうのと言う事は前に比べればかなり減った。
焦ってはいるが、ジタバタしても仕方ない。今では「童貞でーすww」と自らカミングアウトしてしまう程、どうでもいい事になってしまった。
今オレは弾丸がプロテストに合格出来るよう、スパーリングの相手をしたり、トレーニングの相手をすることで精一杯だ。
朝起きて会社に行き、終わればジムに通い、トレーニングの傍ら弾丸の練習相手を努めている。
ハードな毎日だけど、どこか充実した日を送ってるような、そんな気持ちが芽生えてきた感じがした。
そして弾丸のプロテストまで後一週間に迫った。