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君が桜のころ

第2章 花影のひと

その日から、凪子は屋敷の中で綾佳とすれ違う時や、二人きりになった時などにさりげなくキスをしたり、身体を触ったりなどの小さな悪戯をするようになった。
…大階段下の階段室で、踊り場で、庭園の薔薇の茂みの陰で…。
凪子は綾佳の手を引くと、その花の唇を奪い、時にはドレスに隠された慎ましやかな乳房を愛撫する。
そして、綾佳が愛らしい声で啼き始めると、無情にも身体を離し
「…可愛い綾佳さん、好きよ」
と、謎めいた笑みを浮かべながら去って行く。
残された綾佳は身体に沸き起こったばかりの官能の火種をどうしたら良いかわからずに、凪子の美しい後ろ姿を熱く見つめるしかないのだ。

今日も…
綾佳が庭園の薔薇を愛でていると、背後から音もなく忍びよってきた凪子に
手を掴まれ、薔薇の茂みに身体を押し付けられた。
そして、綾佳の薔薇の蕾よりも柔らかく傷つきやすい唇を大胆に奪う。
「…んっ…!…あ…ああ…」
凪子は綾佳のいたいけな唇を難なく奪い、真珠のように美しい歯列を割り、滑らかな薄い舌に凪子のそれを大胆に絡める。
「…お…ねえさ…ま…」
綾佳は凪子が与えてくれるものならどんな快楽でも、嬉しいのだ。
蒸せ返るような薔薇の香気に包まれ、凪子の愛撫を受け、頭の中が朦朧とする。
「…お義姉さま…好き…大好き…愛しています…」
愛する母親に捨てられまいとするかのように、綾佳はキスの合間にかき口説く。
そして、自分からも積極的に舌を絡め、凪子に抱きつく。
「…綾佳さん、キスが上手になったわね…」
凪子は琥珀色の瞳を潤ませ、綾佳の頬を愛しげに抓る。
「可愛いわ…綾佳さん…」
「…お義姉様…触って…綾佳を…もっと…もっと…」

凪子は美しいがまだ未成熟だった綾佳の身体が、次第に熟れ始め、官能に目覚めつつあることを感じた。
ドレス越しの乳房は甘く熟れ、凪子が愛撫を始めるだけで、その慎ましやかだった乳暈はつんと立ち上がり、凪子の愛撫に応えようとしている。
…この美しい少女の、大人の女性へと変化しようとしている身体を完全に支配しているのは自分ただ一人だという倒錯した悦びが凪子を昂らせる。
この少女をもっともっと支配したい…。
暗く湿った欲望が生まれる。
だから凪子は綾佳の快楽が昂まる寸前で、わざと非常にも身体を突き放すのだ。
そして、泣き出しそうな綾佳の耳元で冷酷に告げる。
「…人が来たわ…。今日はここまでよ…」

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