君が桜のころ
第1章 雛祭り
凪子の手伝いを借りながら、綾佳は着物を身につけた。
凪子は丁寧に髪の乱れまで直してくれ、にっこり微笑んだ。
「さあ、これで綾佳さんに相応しいドレスが作れるわ」
そして、再び二人で凪子の居間に戻る。
凪子は採寸したメモを丁寧に仕舞いながら
「…お洋服は三週間くらいで出来るし、綾佳さんのお部屋の改築と家具の搬入もそれくらいで終わるわね。…私達が新婚旅行に行っている間に全て整っているはずだから…」
綾佳が不意に驚く。
「…お義姉様…新婚旅行…て?」
「ああ、来週から一カ月間慎一郎さんと新婚旅行で欧州に行くのよ」
みるみるうちに綾佳の顔が曇り、哀しそうに目を伏せる。
「一カ月…そんなにいらっしゃらないの…。一カ月もお義姉様にお会いできないなんて…」
凪子は優しく綾佳を抱きしめる。
そして美しい黒髪にキスしながら
「…本当に可愛い方ね、綾佳さん。私の不在をそんなに悲しんでくださるのは貴女くらいよ」
「…お義姉様…」
凪子は綾佳の白磁のような頬を軽く抓る。
「…大丈夫、一カ月はすぐよ。お土産を沢山買ってきますからね。何がいい?何でも仰って?」
綾佳は潤んだ黒い瞳で凪子を見上げる。
「…何もいりません。お義姉様が早くご無事に帰って下されば…」
凪子は息が詰まるほど綾佳を強く抱きしめた。
「…もう!どこまでいじらしい方なの、綾佳さん。…何だか新婚旅行に行くのが嫌になったわ。どうしてくれるの?綾佳さん」
綾佳の頬が恥じらいから桜色に染まる。
…と、その時、皐月のやや慌てた声がドアの外で聞こえた。
「春翔様!お待ちください!今、お取り次を…」
同時にドアが開かれ、それと共に陽気な声が響いてきた。
「やあ!凪子、ご機嫌よう。退屈しているんじゃないかと遊びに来たよ。…おっと…!」
その若い青年は凪子に良く似た華やかな美貌で、すらりと背が高く、一目で一流品と分かるスーツを身につけていた。
彼はソフト帽を脱ぎながら、綾佳に目が釘付けになる。
「…これはこれは…お人形さんみたいに恐ろしく美しいお嬢様だ。…もしかしてこの方が綾佳さん?」
いきなり現れた見知らぬ若い青年の出現に綾佳は驚きのあまり身体が強張り、目を見開いたまま口も聞けずにいた。
凪子は丁寧に髪の乱れまで直してくれ、にっこり微笑んだ。
「さあ、これで綾佳さんに相応しいドレスが作れるわ」
そして、再び二人で凪子の居間に戻る。
凪子は採寸したメモを丁寧に仕舞いながら
「…お洋服は三週間くらいで出来るし、綾佳さんのお部屋の改築と家具の搬入もそれくらいで終わるわね。…私達が新婚旅行に行っている間に全て整っているはずだから…」
綾佳が不意に驚く。
「…お義姉様…新婚旅行…て?」
「ああ、来週から一カ月間慎一郎さんと新婚旅行で欧州に行くのよ」
みるみるうちに綾佳の顔が曇り、哀しそうに目を伏せる。
「一カ月…そんなにいらっしゃらないの…。一カ月もお義姉様にお会いできないなんて…」
凪子は優しく綾佳を抱きしめる。
そして美しい黒髪にキスしながら
「…本当に可愛い方ね、綾佳さん。私の不在をそんなに悲しんでくださるのは貴女くらいよ」
「…お義姉様…」
凪子は綾佳の白磁のような頬を軽く抓る。
「…大丈夫、一カ月はすぐよ。お土産を沢山買ってきますからね。何がいい?何でも仰って?」
綾佳は潤んだ黒い瞳で凪子を見上げる。
「…何もいりません。お義姉様が早くご無事に帰って下されば…」
凪子は息が詰まるほど綾佳を強く抱きしめた。
「…もう!どこまでいじらしい方なの、綾佳さん。…何だか新婚旅行に行くのが嫌になったわ。どうしてくれるの?綾佳さん」
綾佳の頬が恥じらいから桜色に染まる。
…と、その時、皐月のやや慌てた声がドアの外で聞こえた。
「春翔様!お待ちください!今、お取り次を…」
同時にドアが開かれ、それと共に陽気な声が響いてきた。
「やあ!凪子、ご機嫌よう。退屈しているんじゃないかと遊びに来たよ。…おっと…!」
その若い青年は凪子に良く似た華やかな美貌で、すらりと背が高く、一目で一流品と分かるスーツを身につけていた。
彼はソフト帽を脱ぎながら、綾佳に目が釘付けになる。
「…これはこれは…お人形さんみたいに恐ろしく美しいお嬢様だ。…もしかしてこの方が綾佳さん?」
いきなり現れた見知らぬ若い青年の出現に綾佳は驚きのあまり身体が強張り、目を見開いたまま口も聞けずにいた。