君が桜のころ
第1章 雛祭り
「…なんだか恥ずかしいです…。私…本当に似合っていますか?」
春翔に褒められて白い頬を薔薇色に染めながら尋ねる。
「似合っているなんてものじゃないよ!凄く…凄く綺麗だ!まるで…お伽話のお姫様みたいだ…」
譫言のように呟き、綾佳の顔から目が離せない。
「…お美ししゅうございますよ…綾佳様。…まあ、本当に…亡くなった奥様によく似ていらして…」
綾佳の輝きに満ちた洋装姿を見て、麻乃は感極まり、目を潤ます。
「…鬼の目にも涙だ…」
思わず口にした春翔を麻乃はジロリと睨む。
「…誰が鬼ですか?」
後から降りてきた皐月がにこにこ笑いながら、綾佳の背中のリボンを整える。
「綾佳様はお美しい上にスタイルがおよろしゅうございますから、ドレスが映えますわ。和装もお似合いですが、洋装もとてもお似合いです」
一緒に降りてきたスミが、綾佳を褒めらた嬉しさから、大きく頷く。
「…本当に…昔を思い出しますわね、麻乃さん。奥様もやはり洋装が良くお似合いで…お若い頃にはこのお屋敷でよく舞踏会が開かれたりしましたっけ…」
麻乃は昔を懐かしむような目をした。
「ええ…奥様は社交界の花と呼ばれた非常にお美しい方でした。いつも奥様の周りには信奉者が沢山いらして…この九条家も華やかに栄えていましたわね…」
春翔は綾佳の全身を見つめながら断言する。
「…今度は綾佳ちゃんが社交界の花になるのさ」
綾佳が吃驚したように春翔を見上げる。
「こんなに綺麗なんだもの。どんどんお茶会や夜会に行こうよ。僕がいつでもエスコートする」
力強く励ます春翔に、綾佳は目を伏せる。
「…私なんか…無理ですわ…引っ込み思案で人見知りで…」
「出来るさ!」
春翔は思わず綾佳の白く美しい手を取り、励ますように握りしめる。
綾佳が息を飲む。
麻乃が驚きに目を剥く。
春翔は構わず続ける。
「凪子が言っていた。綾佳ちゃんを必ず社交界デビューさせるって!僕も力になる!君みたいな綺麗な女の子が引き籠っているのなんて勿体無い!行こうよ、色んな華やかな世界に!」
「…春翔様…」
綾佳が口を開こうとした時に、皐月が声をかける。
「お車が見えて参りましたわ。…旦那様、奥様がご到着になります」
その声を聞くや否や綾佳ははっと振り向き、驚くほど素早い動作で玄関ホールへと駆け出した。
春翔に褒められて白い頬を薔薇色に染めながら尋ねる。
「似合っているなんてものじゃないよ!凄く…凄く綺麗だ!まるで…お伽話のお姫様みたいだ…」
譫言のように呟き、綾佳の顔から目が離せない。
「…お美ししゅうございますよ…綾佳様。…まあ、本当に…亡くなった奥様によく似ていらして…」
綾佳の輝きに満ちた洋装姿を見て、麻乃は感極まり、目を潤ます。
「…鬼の目にも涙だ…」
思わず口にした春翔を麻乃はジロリと睨む。
「…誰が鬼ですか?」
後から降りてきた皐月がにこにこ笑いながら、綾佳の背中のリボンを整える。
「綾佳様はお美しい上にスタイルがおよろしゅうございますから、ドレスが映えますわ。和装もお似合いですが、洋装もとてもお似合いです」
一緒に降りてきたスミが、綾佳を褒めらた嬉しさから、大きく頷く。
「…本当に…昔を思い出しますわね、麻乃さん。奥様もやはり洋装が良くお似合いで…お若い頃にはこのお屋敷でよく舞踏会が開かれたりしましたっけ…」
麻乃は昔を懐かしむような目をした。
「ええ…奥様は社交界の花と呼ばれた非常にお美しい方でした。いつも奥様の周りには信奉者が沢山いらして…この九条家も華やかに栄えていましたわね…」
春翔は綾佳の全身を見つめながら断言する。
「…今度は綾佳ちゃんが社交界の花になるのさ」
綾佳が吃驚したように春翔を見上げる。
「こんなに綺麗なんだもの。どんどんお茶会や夜会に行こうよ。僕がいつでもエスコートする」
力強く励ます春翔に、綾佳は目を伏せる。
「…私なんか…無理ですわ…引っ込み思案で人見知りで…」
「出来るさ!」
春翔は思わず綾佳の白く美しい手を取り、励ますように握りしめる。
綾佳が息を飲む。
麻乃が驚きに目を剥く。
春翔は構わず続ける。
「凪子が言っていた。綾佳ちゃんを必ず社交界デビューさせるって!僕も力になる!君みたいな綺麗な女の子が引き籠っているのなんて勿体無い!行こうよ、色んな華やかな世界に!」
「…春翔様…」
綾佳が口を開こうとした時に、皐月が声をかける。
「お車が見えて参りましたわ。…旦那様、奥様がご到着になります」
その声を聞くや否や綾佳ははっと振り向き、驚くほど素早い動作で玄関ホールへと駆け出した。