
君が桜のころ
第1章 雛祭り
居間では慎一郎、凪子を囲み、綾佳と春翔がお茶を飲みながら新婚旅行の土産話に花を咲かせていた。
乳母のスミは、この華やかな場面に綾佳がいて、しかも美しいドレスで装い、楽しげに凪子の側に寄り添っているのが嬉しくてならなかった。
今まで、綾佳はこういった場面では蚊帳の外であったからだ。
親戚の集まりや、来客があると、息を潜めるように離れに篭っていた綾佳が…
今は慎一郎の妻、この屋敷の女主人凪子に可愛がられ、当人も幸せそうにこの場に馴染んでいる。
…奥様が生きていらしたら、どんなに喜ばれただろうか…。
感激屋のスミは袖でそっと涙を拭う。
凪子は綾佳の首に美しいダイヤモンドの首飾りを掛けてやる。
「パリのカルティエで買ったのよ。デザインがあまりに可愛らしくてね…きっと綾佳さんにお似合いだろうと思って」
正面から見て微笑む。
「まあ!やはり良くお似合いだわ」
春翔も目を輝かせる。
「本当だ!…すごく綺麗だ、綾佳ちゃん」
プラチナの鎖にダイヤモンドは花の形でデザインされている。
一目で高価な品だと分かる上品な…それでいて華やかな首飾りだった。
大好きな凪子がわざわざ自分に選んでくれた首飾り…綾佳は嬉しさの余りなかなか声が出なかったが、小さな声で精一杯の感謝を伝える。
「ありがとうございます、お義姉様…大切にいたします」
慎一郎はさすがに苦言は呈さなかった。
何気なく見た綾佳が思わず息を呑むほど美しかったからだ。
…凪子さんがこの家に来てから、綾佳は殻を破るように眩いほどに変化していっている…。
それは認めざるを得なかった。
美しい容姿なのに陰気な印象ばかり目立っていたのが今は、控えめではあるが内側から煌めきを発するようになってきたのだ。
…それに連れて益々お母様に酷似してくるのは皮肉なものだな…。
慎一郎は唇を歪め苦笑する。
「パリはどうでした?慎一郎義兄さん」
春翔がパリ土産のマカロンを口にしながら尋ねる。
「素晴らしかったよ。特に美術館は最高だった。ルーブル、オルセー、オランジュリー…ずっと本物を観る日を夢見ていたから…。凪子さんのおかげだ。…ありがとう」
慎一郎が愛に満ちた眼差しで凪子を見つめ、凪子の手を握りしめた。
「とんでもありませんわ。慎一郎さんのお役に立てたのなら幸いです」
凪子も艶めいた瞳で見つめ返す。
綾佳はなぜだか胸が切なく痛むのを感じた。
乳母のスミは、この華やかな場面に綾佳がいて、しかも美しいドレスで装い、楽しげに凪子の側に寄り添っているのが嬉しくてならなかった。
今まで、綾佳はこういった場面では蚊帳の外であったからだ。
親戚の集まりや、来客があると、息を潜めるように離れに篭っていた綾佳が…
今は慎一郎の妻、この屋敷の女主人凪子に可愛がられ、当人も幸せそうにこの場に馴染んでいる。
…奥様が生きていらしたら、どんなに喜ばれただろうか…。
感激屋のスミは袖でそっと涙を拭う。
凪子は綾佳の首に美しいダイヤモンドの首飾りを掛けてやる。
「パリのカルティエで買ったのよ。デザインがあまりに可愛らしくてね…きっと綾佳さんにお似合いだろうと思って」
正面から見て微笑む。
「まあ!やはり良くお似合いだわ」
春翔も目を輝かせる。
「本当だ!…すごく綺麗だ、綾佳ちゃん」
プラチナの鎖にダイヤモンドは花の形でデザインされている。
一目で高価な品だと分かる上品な…それでいて華やかな首飾りだった。
大好きな凪子がわざわざ自分に選んでくれた首飾り…綾佳は嬉しさの余りなかなか声が出なかったが、小さな声で精一杯の感謝を伝える。
「ありがとうございます、お義姉様…大切にいたします」
慎一郎はさすがに苦言は呈さなかった。
何気なく見た綾佳が思わず息を呑むほど美しかったからだ。
…凪子さんがこの家に来てから、綾佳は殻を破るように眩いほどに変化していっている…。
それは認めざるを得なかった。
美しい容姿なのに陰気な印象ばかり目立っていたのが今は、控えめではあるが内側から煌めきを発するようになってきたのだ。
…それに連れて益々お母様に酷似してくるのは皮肉なものだな…。
慎一郎は唇を歪め苦笑する。
「パリはどうでした?慎一郎義兄さん」
春翔がパリ土産のマカロンを口にしながら尋ねる。
「素晴らしかったよ。特に美術館は最高だった。ルーブル、オルセー、オランジュリー…ずっと本物を観る日を夢見ていたから…。凪子さんのおかげだ。…ありがとう」
慎一郎が愛に満ちた眼差しで凪子を見つめ、凪子の手を握りしめた。
「とんでもありませんわ。慎一郎さんのお役に立てたのなら幸いです」
凪子も艶めいた瞳で見つめ返す。
綾佳はなぜだか胸が切なく痛むのを感じた。
