君が桜のころ
第1章 雛祭り
綾佳は熱に浮かされたように頬を薔薇色にそめ、頷く。
「…キスして、と言ってみて?綾佳さん」
綾佳は羞恥に首筋まで朱に染める。
そして、蚊の鳴くような小さな声で囁いた。
「…キスして…ください…お義姉様…」
…こんなこと、お願いするのは恥ずかしい。
恥ずかしくて死にそうになる。
けれど綾佳にはその羞恥よりも、凪子とキスをしたい感情が勝っていた。
凪子に与えて貰えるキスの陶酔感をもう一度、味わいたかったのだ。
「…いいわよ、可愛い綾佳さん」
唄うように囁くと、凪子は綾佳の顎を引き寄せると、そっと唇を合わせた。
「…あ…」
甘く痺れるような陶酔が身体中に広がる。
凪子の柔らかく包み込むような唇をうっとりと感じていると、不意に綾佳の口内にベルベットの如く滑らかなものが忍び込み、綾佳のまだ幼気で未熟な口内を浚うように浸入し、緊張の余り縮み上がっている舌を一瞬だけ絡めたのだ。
「…んんっ…は…あっ…」
あの日の別れ際のくちづけと比にならないくらいに甘く痺れた快美感が身体の奥底に気怠く響き、波紋のように広がった。
綾佳は思わず掠れた声を上げた。
しかし、凪子の舌はあっという間に綾佳の舌を解放し、唇をも放してしまう。
「…ああ…お義姉さま…」
体験したことのない快感を無意識に引き止めたくて、綾佳は自分から凪子にしがみつき、濡れた瞳でうらめしそうに見上げる。
凪子は先ほどの淫靡さを嘘のように消し去った優しい聖母のような笑みを浮かべ、柔らかく綾佳を抱きしめた。
「…この続きは、綾佳さんの未来の恋人に取っておきましょう」
「…お義姉様…」
綾佳は泣きそうになる。
…恋人…
恋人って、どのような存在なのかしら…。
その人を思うだけで恋しくて、愛しくて、苦しくて、哀しくて、たまらなくて…
そんな存在だとしたら…
私は…
もう出逢っているのに…。
潤んだ美しい夜の星のような綾佳の瞳を見つめ返し、凪子は優しく頬にキスする。
「…大好きな綾佳さん、貴女には世界で一番幸せな恋をしていただきたいわ…」
…お義姉様…。
なんて、優しくて、そして…残酷な言葉…。
綾佳は凪子の肩に頬を寄せながら、そっと涙を滲ませた。
「…キスして、と言ってみて?綾佳さん」
綾佳は羞恥に首筋まで朱に染める。
そして、蚊の鳴くような小さな声で囁いた。
「…キスして…ください…お義姉様…」
…こんなこと、お願いするのは恥ずかしい。
恥ずかしくて死にそうになる。
けれど綾佳にはその羞恥よりも、凪子とキスをしたい感情が勝っていた。
凪子に与えて貰えるキスの陶酔感をもう一度、味わいたかったのだ。
「…いいわよ、可愛い綾佳さん」
唄うように囁くと、凪子は綾佳の顎を引き寄せると、そっと唇を合わせた。
「…あ…」
甘く痺れるような陶酔が身体中に広がる。
凪子の柔らかく包み込むような唇をうっとりと感じていると、不意に綾佳の口内にベルベットの如く滑らかなものが忍び込み、綾佳のまだ幼気で未熟な口内を浚うように浸入し、緊張の余り縮み上がっている舌を一瞬だけ絡めたのだ。
「…んんっ…は…あっ…」
あの日の別れ際のくちづけと比にならないくらいに甘く痺れた快美感が身体の奥底に気怠く響き、波紋のように広がった。
綾佳は思わず掠れた声を上げた。
しかし、凪子の舌はあっという間に綾佳の舌を解放し、唇をも放してしまう。
「…ああ…お義姉さま…」
体験したことのない快感を無意識に引き止めたくて、綾佳は自分から凪子にしがみつき、濡れた瞳でうらめしそうに見上げる。
凪子は先ほどの淫靡さを嘘のように消し去った優しい聖母のような笑みを浮かべ、柔らかく綾佳を抱きしめた。
「…この続きは、綾佳さんの未来の恋人に取っておきましょう」
「…お義姉様…」
綾佳は泣きそうになる。
…恋人…
恋人って、どのような存在なのかしら…。
その人を思うだけで恋しくて、愛しくて、苦しくて、哀しくて、たまらなくて…
そんな存在だとしたら…
私は…
もう出逢っているのに…。
潤んだ美しい夜の星のような綾佳の瞳を見つめ返し、凪子は優しく頬にキスする。
「…大好きな綾佳さん、貴女には世界で一番幸せな恋をしていただきたいわ…」
…お義姉様…。
なんて、優しくて、そして…残酷な言葉…。
綾佳は凪子の肩に頬を寄せながら、そっと涙を滲ませた。