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君が桜のころ

第1章 雛祭り

「…まあ、可愛らしい!やっぱり良くお似合いだわ」
凪子はうっとりと綾佳を見つめる。

綾佳の部屋の隣にある凪子の支度部屋で、皐月に着替えを手伝ってもらい、綾佳は凪子のフランス土産のネグリジェを身に付けていた。
真珠色のシルクのネグリジェは、綾佳の初々しい身体に優しく馴染み、美しいシルエットを浮かび上がらせる。
綾佳の驚くほど女性らしい胸の膨らみや、お尻の豊かさが強調され、少女の清らかさと艶やかな色香を同時に感じさせられ、見る者の目を思わず奪うものだった。
しかし、当の本人は全く自分の外見的な魅力に気づいておらずに、無防備な様子なのもまた凪子の綾佳に対する庇護欲と支配欲を唆るのだった。
凪子は皐月を見て満足げに頷いた。
皐月は二人に丁寧にお辞儀をして、静かに部屋を退出した。

大きな姿見に綾佳を映し出して見せ、凪子は後ろから綾佳を抱きしめる。
「…お美しいわ…綾佳さん。貴方は本当にスタイルが良いのね」
凪子のしなやかな美しい手が綾佳の胸の線からお尻の線をゆっくりと辿る。
「…あ…っ…」
甘い疼きが綾佳の乳房の奥に走る。
凪子は揶揄うように笑うと綾佳の髪にキスをする。

綾佳は勇気を奮い起こし、凪子に尋ねた。
「…お義姉様…」
「なあに?」
「…パリはいかがでしたか?お義姉様はパリに長く留学されていらしたから、懐かしくていらっしゃったでしょうね…。昔のお友達などにお会いになったのかしら…?」
今まで余裕に満ちた表情をしていた凪子が一瞬、真顔になった。
しかし次の瞬間にはいつもの妖艶な凪子の表情になる。
「そうね、懐かしかったわ。
…でも、ずっと慎一郎さんに美術館や名所をご案内していたから、旧友には会わなかったの」
「…そうでしたの…」
ほっとしていると、支度部屋の隣…夫婦の寝室から慎一郎の低い美声が聞こえた。

「…凪子さん、そろそろ寝もう…」
まるで、凪子を寝台で待ちかねているかのような焦れた声だった。
綾佳はなぜか身体が熱くなる。
凪子はすぐに寝室に向かい、艶めいた声で返事をする。
「慎一郎さん、今まいりますわ。
…では綾佳さん、また明日ね。
…お寝みなさい。良い夢を…」
凪子は綾佳の額に優しくキスをする。
「…お寝みなさい、お義姉様…」
綾佳は素直にキスを受け、支度部屋から奥の寝室へとしなやかに歩み去る凪子を、切なげな眼差しで見送った。





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