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「私は慎一郎さんと綾佳さんとご縁があって家族になれたことを幸せに思っておりますのよ。
慎一郎さんは私をこの上なく、大切にしてくださいますし、本当にお美しくて理知的で高貴で素晴らしい方ですわ。
綾佳さんも…」
と綾佳を見る。

皐月の手により、美しくカールが施された黒髪、淡い桜色の長袖のドレス、化粧をしなくても透き通るような白い肌、黒曜石のような大きな黒い瞳、繊細な鼻筋、咲き初めたばかりの八重桜のような唇…。
…芸術品のような女の子だわ…。
凪子は満足そうに笑い、綾佳を安心させるように頷く。
「…こんなにお美しくてお可愛らしい方を妹と呼べて、私は幸せを噛みしめておりますわ。…私は美しい人が大好きですの。
…美だけは人を決して裏切りませんから…」
ふっとなんとも言えない寂寥感のようなものが凪子を包んだ。
綾佳は不安そうに思わず声をかける。
「…お義姉様…」
はっと我に返った凪子はすぐに妖艶な笑みを浮かべた。
「…私が九条家をお守りしますわ。美しい方々とこの由緒正しき歴史あるお家を…。これ以上、やり甲斐のある使命はございません。…ですから、お披露目会も…そして綾佳さんの社交界デビューも必ずや成功させてみせますわ」
それは凪子が自分自身に言い聞かせる宣言のように、綾佳には聞こえた。