君が桜のころ
第2章 花影のひと
彌一郎は眼鏡を押し上げながら嫌味な笑いを浮かべる。
「凪子も大概面喰いだが、お前も本当に単純だな。どれだけ美人か知らないが、引き篭もりの無為徒食なお姫様を好きになってどうする。
…凪子に続き、お前まであの貧乏公家に財産を注ぎ込むつもりか?
やめろやめろ、お前にはうんと大金持ちのご令嬢と結婚してもらうつもりなんだからな。不細工でもなんでもいいんだ。金さえ持っていたら…」
春翔の堪忍袋の尾が切れた。
春翔はテーブルに思い切り両手を叩きつけ、立ち上がる。
「綾佳ちゃんのことを引き篭もりのお姫様って言うなって言ってんだろ⁈このクソ兄貴‼︎」
彌一郎の神経質そうな眉がピクリと動く。
「何?」
春翔はつかつかとテーブルを回り込み、彌一郎の前に詰め寄る。
「…大体、長男のテメエが大富豪のお嬢様と結婚すれば済む話だろうがよ!
…だけど来る見合い来る見合い、全て断られて全敗!…だからって俺に打算の結婚を押し付けんじゃねえよ!バ〜カ!」
彌一郎の顔が茹で上げた蛸の如く赤くなる。
「き、き、き、貴様!」
春翔はせせら笑いながら彌一郎のスーツの襟を掴む。
「…一度なんか、俺が見合いに同席したら、あとでこっそりご令嬢が…『春翔さんがお見合い相手だったら良かったのに…』て耳打ちしたんだぜ。
当然だよなあ…あんた、女を喜ばすカオもセンスもユーモアもなんもないもんなあ」
彌一郎が金切声を上げる。
「春翔ッ!きさまッ!」
「…見合いの席で、為替の話なんかしてんじゃねえよ!つまんね〜んだよ!テメエはよ!」
そして彌一郎の身体を思い切り突き飛ばす。
彌一郎は壁に投げ飛ばされ、メイド達から悲鳴が上がる。
家政婦のあずさはまたかというようにため息を吐く。
「…また彌一郎様と春翔様の喧嘩が始まったわ」
新人メイドの一人が青くなりながら尋ねる。
「お、お、お止めしなくて良いのですか?」
あずさは肩をすくめる。
「止めても無駄よ。最後は彌一郎さんがやられておしまいになってお開きだから」
彌一郎も負けてはいない。
背中を向けて部屋を出ようとした春翔の腰にタックルをする。
春翔がその場に倒される。
彌一郎は春翔に馬乗りになり、春翔の顔を殴りつける。
「このクソガキめ!ちょっとツラがいいからって調子に乗るんじゃねえ!お前なんか一之瀬財閥のお荷物なんだからな!」
「だれがそんなクソ会社なんかの世話になるかよッ!」
「凪子も大概面喰いだが、お前も本当に単純だな。どれだけ美人か知らないが、引き篭もりの無為徒食なお姫様を好きになってどうする。
…凪子に続き、お前まであの貧乏公家に財産を注ぎ込むつもりか?
やめろやめろ、お前にはうんと大金持ちのご令嬢と結婚してもらうつもりなんだからな。不細工でもなんでもいいんだ。金さえ持っていたら…」
春翔の堪忍袋の尾が切れた。
春翔はテーブルに思い切り両手を叩きつけ、立ち上がる。
「綾佳ちゃんのことを引き篭もりのお姫様って言うなって言ってんだろ⁈このクソ兄貴‼︎」
彌一郎の神経質そうな眉がピクリと動く。
「何?」
春翔はつかつかとテーブルを回り込み、彌一郎の前に詰め寄る。
「…大体、長男のテメエが大富豪のお嬢様と結婚すれば済む話だろうがよ!
…だけど来る見合い来る見合い、全て断られて全敗!…だからって俺に打算の結婚を押し付けんじゃねえよ!バ〜カ!」
彌一郎の顔が茹で上げた蛸の如く赤くなる。
「き、き、き、貴様!」
春翔はせせら笑いながら彌一郎のスーツの襟を掴む。
「…一度なんか、俺が見合いに同席したら、あとでこっそりご令嬢が…『春翔さんがお見合い相手だったら良かったのに…』て耳打ちしたんだぜ。
当然だよなあ…あんた、女を喜ばすカオもセンスもユーモアもなんもないもんなあ」
彌一郎が金切声を上げる。
「春翔ッ!きさまッ!」
「…見合いの席で、為替の話なんかしてんじゃねえよ!つまんね〜んだよ!テメエはよ!」
そして彌一郎の身体を思い切り突き飛ばす。
彌一郎は壁に投げ飛ばされ、メイド達から悲鳴が上がる。
家政婦のあずさはまたかというようにため息を吐く。
「…また彌一郎様と春翔様の喧嘩が始まったわ」
新人メイドの一人が青くなりながら尋ねる。
「お、お、お止めしなくて良いのですか?」
あずさは肩をすくめる。
「止めても無駄よ。最後は彌一郎さんがやられておしまいになってお開きだから」
彌一郎も負けてはいない。
背中を向けて部屋を出ようとした春翔の腰にタックルをする。
春翔がその場に倒される。
彌一郎は春翔に馬乗りになり、春翔の顔を殴りつける。
「このクソガキめ!ちょっとツラがいいからって調子に乗るんじゃねえ!お前なんか一之瀬財閥のお荷物なんだからな!」
「だれがそんなクソ会社なんかの世話になるかよッ!」