蜘蛛♠
第3章 アルバイト
そんな時に訪れた千載一隅のチャンス。
「招待状」という名の希望の扉。
女体も見れて尚且つお金も手に入る。
坂本の興味をひかないわけがない。
坂本は腕時計に目をやった。
定価1980円の安物の時計。以前は35万円の高級時計をしていたが、それも彼女の為に売ってしまっていた。
時計の針は午後20時を過ぎている。「招待状」に記載されていた待ち合わせ時刻は午後23時。
「決めた!!!俺、一人で行ってくるわ~~」
『えっ…………』
恭介と架純の返答を待たずに坂本は玄関に向かった。
すると突然腕を捕まれる。
恭介だ。
そのまま恭介は坂本の進行方向、玄関への道をその大きな体で塞いだ。
「いや、ダメっすよ坂本さん!!!絶対なんかの罠です!!ボコボコにされるだけで済めばいいっすけど、万が一殺されでもしたら…………」
「殺され…………!!ま…、まさか~……」
坂本の顔がひきつった。
「冗談とかじゃなくて、万が一殺されてしまったら、俺はここで坂本さんを止めれなかった事を一生悔やみますよ!」
そう言って恭介は両腕を広げて壁を作った。
二人を見守る架純。
坂本の頬を冷や汗がこぼれ落ちる。
「だ………大丈夫!!俺はこう見えて北斗神拳の使い手だ!!!」
坂本の思わぬ言葉に架純が吹きそうになった。
「北斗神拳て…………!北斗の拳じゃないですかぁぁ!!漫画の見すぎです~」
瞬間、坂本は叫びをあげた。
「ホアッチョーー!!!!」
「フベボーーッッ!!!!!」
揺れる恭介の視界。
腹部に違和感。いや強烈な衝撃!!
唖然とする架純。
時間にしてコンマ数秒、恭介はその場に膝から崩れ落ちた。
ビックリした架純が恭介に立ち寄る。
坂本の右拳は確実に恭介のどてっ腹をとらえていた。
「な………何するんですかぁ!!!きょ、恭介さん!!!恭介さん大丈夫!!??恭介さん!!」
恭介の背中を必死で擦りながら架純は坂本を睨み付けた。
すると坂本
「北斗神拳は無敵だ!!!」
言いながら構えをとった。
腹部をおさえながら苦しむ恭介。
「だ……大丈夫だ架純……。それより坂本さんを……この部屋から一歩も出すな!!23時まで……何とか時間を稼げ……………!!坂本さん………!!不意打ちは卑怯っすよ……。絶対行かせませんからね……!!」
恭介の言葉に架純の表情が著しく変わっていく。