蜘蛛♠
第3章 アルバイト
恭介は必死で頬っぺたを叩いた。
が坂本はピクリとも動かない。
武術を心得ていたとは聞いていたが、これほどとは想像もしていなかった。
頼むから生きていてくれっ!!!
すると、恭介の願いが聞いたのか、坂本から弱々しい声が発せられた。
「…………………………嫌だ。」
架純と恭介は坂本の声に耳を傾ける。
「僕は………嫌だ………。僕は…嫌だ!!僕は嫌だ!!!!!行ぎだい!!行ぎだい!!行ぎだい!!!!オッパイ見たい!!!セックス見たい!!!!お金も欲しい!!!!ウウゥゥ………!!」
坂本は子供のように泣き出した。右腕で顔を隠しているが、大量の涙が腕の隙間から床へと伝ってゆく。
そこまでして行きたいのか。坂本にこれほどの性欲と金銭欲があることを恭介は初めて知った。
いったいどのような生活を送っているのか。
どのような窮地に追い込まれたら、これほどの欲求が生まれるのか。
彼女とはうまくいっていないのか?幸せではないのか?
どちらにせよ、坂本の意思はそうとう固い。行かせるべきか………。
だが万が一、坂本の身に何かが起きてからでは遅い。万が一殺されでもしたら………。
俺も一緒に行くべきか……。架純には申し訳ないが親友を失うわけにはいかない。
恭介はゆっくりと坂本を起こした。
「坂本さん!!!良かった生きてて!!」
すると架純も
「坂本さん!!!良かったですぅ~!!ごめんなさい!!!本当ごめんなさい!!こんなつもりじゃなかったんです~!!」
若干、涙をうかべなから坂本に謝罪した。
「架純も悪くない!大丈夫だっ!!」
恭介は架純をギュッと抱き寄せた。
安心したのか架純の目から涙がこぼれ落ちた。
「それより架純………」
恭介は架純の肩に両手を添え距離を離す。
「俺、行ってくるわ……。本当は坂本さんを行かせないのが一番なんだけど……。こんな坂本さん見たことなくて……何かきっと深い闇を抱えてるんだと思う!!あっ、大丈夫だ!俺は他人の性交為を覗いたりなんかしないから!!!あくまで坂本さんのボディガードだ」
言いながら架純の涙を指で拭った。
「えっ………………そんな………」
再び流れ出す架純の涙。
二人のやり取りを、坂本は茫然と見つめている。
自分のワガママのせいで二人の仲に亀裂が………
我を取り戻した坂本が、言葉を発しようとした時、架純が言った。