蜘蛛♠
第3章 アルバイト
「嫌です……!!私嫌です!!!恭介さんの身に何かあったら………それに!!それによく考えてください!!!こんな招待状信じて行く人なんて、世の中に絶対いませんよ!!!」
いて悪かったな………
坂本は喉まで出かけた言葉を飲みこんだ。
恭介は頭を抱えた。
架純の言ってることは正論だ。こんなイタズラじみた招待状を信じる人間のがどうかしている。
だが親友の坂本を放っておく訳にもいかない。
かと言って、架純をこれ以上泣かせる訳にもいかない。
愛する彼女、架純を選ぶべきか。
長く連れ添った親友、坂本を選ぶべきか。
恭介は苦しい選択を迫られた。
恭介が返答につまる。
30秒ほど沈黙が続いただろうか。
すると架純が突然隣の部屋に移動した。
そしてバッグから何かを取りだし二人の元へ戻ってきた。
「これで決めましょう~!!」
差し出された小さな手のひらの上に1枚の100円玉。
「コイントスです~!」
コイントス=2者の役割分担・順位付け・権利などを決定するために、硬貨もしくは同様の材質・形状を持つものを投げて表か裏のどちらが出るかを当てるゲーム だ。
「こっちが表でこっちが裏です~!もし表が出たら、坂本さんは諦めて静かにここで待機。もし裏が出たら、坂本さんのしたいように、この招待状の場所に行って下さい!その代わり、恭介さんは連れて行かないでください!どうですかこれで~?」
架純の提案に恭介と坂本は顔を見合わせた。
選択権を神に委ねる。もはやそれしかないのかもしれない。
すると坂本が涙をぬぐいながらゆっくりと立ち上がった。
「てゆ~かぁ~、いや、まじでぇ~、俺一人で行ってくるし~!俺の人生を二人が決める権利はないしぃ~」
まるで先程の投げ技のダメージなど感じさせることなく、坂本は平然と言ってのけた。