蜘蛛♠
第5章 能力者
携帯をしまい川澄は立ち上がった。
遅れですめばまだマシだ。このままでは、ミッション自体の成功すら危ういかもしれない。
川澄は深呼吸をして、1度心を落ち着かせた。
まずやるべき事。
S子に誤解を解かなければならない。いや、誤解ではないのだが…………S子と接触して反応を確かめない限り、先に進むことはできない。
川澄は先ほどS子が落としたオタマを手にとった。
そして勇気を振り絞り、リビングのドアノブに手をかけた。
かつて流行した漫画『スラムダンク』を思い出す。
王者、山王工業VS湘北高校。
山王工業に20点差をつけられた湘北高校は、そこから奇跡の大逆転を巻き起こし、見事に勝利した。
今のこの状況は、ちょうど20点差をつけられた湘北の立場。
ならば、諦めたらそこで試合終了だ。
幻影旅団をなめるなよ。
川澄はドアノブを勢いよく回した。
が、そこで動きを止めた。
とんでもない事に気づく。
パンティーを被ったままだ!!!!!!
川澄はドアノブから手を離し、すぐさまパンティーを顔から外した。
またもや失態を犯すところだった!!
もはや、まともに脳が機能していない。
心のダメージは予想以上に深いようだ。
何をやってるんだ俺は!!!
落ち着け川澄!!落ち着け俺!!!
失うものはもうないだろ!!!
目を覚ませ!!!!!!
自分に言い聞かせ、M奈のパンティーをポケットにしまった。
そして今度こそドアノブを回し、リビングの扉を勢いよく開けた。
眩しい光が視界を襲う。
およそ12畳……いや15畳はあるだろうか。
真ん中に大きなテーブルに椅子が4つ。
その他家具がもろもろと置かれているにもかかわらず、それでも充分広さを堪能できる。
さすがに子供も一緒に住んでるからなのか、物が多いようだ。