テキストサイズ

eme

第3章 街の闇

「なあエメにいちゃん。怖い顔してるな」

エメは結局、昼食は食べずにゴーレムを治して回った。
固定型薪割りゴーレム、ピムのように哀願用ゴーレム、運搬用ゴーレム。
四件目の運搬用ゴーレムを治した後に、その家の子供が言う。

「そうかな?」

涼しい顔で答えるが、もやもやと胸に消化できない何かを感じていた。
ミーシャが今年、領主に召喚されるのは間違いない。
ミーシャと行った市場。そこで聞こえた会話から、エメは確信を持っていた。

四件目の修理を終えて
その日のゴーレム修理は止め、ミーシャの家へと帰る。あたりは暗くなりはじめていた。

「ただいま」

「お帰りなさい。夕飯、もう少しでできるわよ」

「ああ……」

エメはバックをおろし、四人掛けテーブルのイスに座る。

「今日はどうだった?勉強になった?」

「そこそこ、かな。それよりも」

「ん?どうしたの?」

「……ミーシャ。18歳の誕生日、いつだ?」

「え?」

ミーシャはどきっとした顔をするが、キッチンに立っているためエメには見えていない。

「……来週だよ」

「……そうか。
今日さ、レイラっていう女性を領主が連れていくのを広場で見たんだ」

「……そう」

ミーシャは下唇をぎゅっと噛む。

「俺は……よそ者だからな。領主がどんなルールを決めていようと関係ない。でも」

「……でも?」

ミーシャが振り返る。

「領主は……ゴーレムの使い方が美しくない」

「……っもう! 違う!」

不機嫌そうに料理に戻るミーシャ。

「……? 何かおかしなことを言ったか?」

料理の配膳を始めたミーシャは、どことなく不機嫌だった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ