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第4章 変革の代償

何かが小柄な男に当たる。
それは丁度すねに当たり、彼はとっさにミーシャから手を離し、そこを押さえた。

「いってぇ!……なんですか次は!」

そこにいたのは、ピムだった。

「もっ」

ミーシャはピムに駆け寄り、抱きしめる。

「ダメだよピム、お家にいて」

領主が馬車から降り、ミーシャの髪の毛を掴み上げる。
ミーシャの顔が苦痛に歪む。

「あなたのゴーレムですか?」

「……領主様。わたしは行きますから、この子にはなにもしないで下さい」

ピムはもう一度タックルをしようと構える。
領主はミーシャの髪の毛を離した。

「どいつもこいつも命令なしで良く動く。これもその凄腕の技術者のなせる技……ですかねぇ。」

領主はピムに向かい、構える。
小柄な男はまだ痛がっている。

「当然、屋敷には来てもらいますよ。でも……」

ピムが飛び込んで来ると同時に、領主は真っ直ぐ足を向けた。

「火の粉は払わなければ、ね」

「ピム!!だめ!!」

ピムは自分の勢いをそのまま、足の裏で受けられバラバラになってしまった。

「来ることがわかっているなら対処は簡単。構えて待てば自壊します」

目の前でバラバラになるピムに、ただただ泣き崩れるミーシャ。

「こんな時代遅れの安物……なんの価値もない。もっといいゴーレムを買って差し上げましょう」

「ううう……ピム……」

「さ、参りますよ。笑いなさい」


力の抜けたレブロを残し、ミーシャは馬車に乗せられる。
ミーシャは無理に笑顔を作り、レブロを見たあと馬車は走り去る。

レブロは椅子をずるずるとゆっくり引きずって、巨人の下半身の前に座り直した。

ゆっくりと、椅子を揺らす。

レブロはエメの話を思い出していた。

(故意に壊されたゴーレムは、治すなと言われています)

椅子を揺らす。

(それは……技術者達の祈りだと……聞いています)

「……お主は……間違っていないよ、良くやってくれたな。ゴーレムよ」




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