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eme

第1章 漂流

「あんた若いのにゴーレム技術者なのか!頼む。うちのゴーレムを治してくれないか!」

「お願いいたします。どうか、どうかうちのゴーレムを治してください」

その場に居合わせた人々がエメに集まり、
エメは沢山の声に埋もれそうになる。

「まってくれ!」と
エメの声に静かになる民衆。

「これだけの数、今日一度には無理だ。すまない。
ただ、この街にはまだいるから、可能なら少しずつ治してあげるよ。
僕は旅をしてて、ここには来たばかりだ。
まだ彼女に街のことも聞かないと」

仕方ない、という表情を浮かべ、民衆はゆっくりと解散した。

民衆に圧倒されて少し離されたエメは
ミーシャに駆け寄る。

ピムとミーシャとエメは市場を歩き始めた。

「正直、驚いたよ。なぁ、ミーシャ。
ゴーレムは居るのになんでこんなにも技術者が
いないんだ?」

エメが感じたのは明らかな違和感。
ゴーレムは普及しているにも関わらず
技術者が少なすぎる実態。

「全部領主様のせいだよ」

彼女の表情が暗くなる。

「領主様が世代を代わられたのが8年前、その頃から空気が変わった」

「あの大砲ゴーレムもそのころ」

「領主様が住んでるあの場所に近いほど、位の高い人のお家でね」

「しかも領主様はゴーレム技術者の家ばかり高い税金をとったの。
ただし、城で領主様のために働くなら税金はとらないってね」

エメは考えこんでいるような仕草になる。

「ふむ……」

ミーシャは続ける。

「自分のために働かせたくって、きっとそうしたのね。
街にいたゴーレム技術者は、領主様のために働くか、街を出るしかなかった」

「なるほど」

「街事態はわりと安定しているわ。餓えて死ぬ、なんてことはないくらいに。」



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