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赤い鴉

第2章 cloudy

「……保健室は仮眠室じゃないって何度云ったら分かる?」
「良いだろ?定時棟だと暑いし」
大河の出張からすでに2週間…辻は落ち着きを取り戻した。取り戻すまで毎晩意識がトぶまでヤれた。
「はぁ…サボるのもほどほどにしろよ、俺にも立場ってものがあるんだから」
ため息を吐く辻にタケルは白々しい目を向ける。
スマホに着信が入る、電話をかけて来た相手は大河…タケルは思わず眉をひそめる。幸い辻は書類に向き合っていて気付いてない。タケルは1度電話を切る。
「どこに行くんだ?」
「……購買、腹減ったからパンでも買ってくる」
辻が「授業行くんじゃないのか」と呟いた気がしたが無視した。
タケルは保健室を出て定時棟の教室に向かい大河に電話をかけ直す。
「兄貴…なんか用か?」
『…いや、特に用はないけど、タケルが元気か心配になって』
大河はあの事件以降、例え出張先であろうとこうして定期的に電話かけてくる。昼休みが終わるまで時間はあったのせ適当に世間話に付き合い安心させる。
「ふぅ…あっちぃ」
クーラーの効いてる保健室と違い定時棟は夜しか使わないため昼間はクーラーがついていない。蒸し風呂状態の定時棟を出て教室に向かう。
「綾瀬じゃん、珍しい」
「………誰だったけ?」
「信楽 雄大!!前も云ったけど名前で呼んでね?」
雄大はウィンクする、なんでそんなにテンション高いんだろうと疑問に思ったが大河に心配させないように神経を使ったせいかまぶたが重くなった。机に突っ伏すと雄大のことをすっかり忘れ眠りについた。
「起きた?」
「雄大…何してんだ?」
目が覚めると長い脚を組んでスマホを弄ってる雄大がいた。
「なあタケル?これか一緒に帰ろうぜ」
「……他当たれ」
自分をを置いて帰ろうとするタケルの腕を掴む雄大。
「タケルが起きるの待ってたから他に誘う人いないよ」
雄大の言葉にはっとなるタケル…思ったより長い時間寝てたようで周囲にタケルと雄大以外いない。
「勝手にしろ」
タケルは髪をくしゃくしゃとかいて云うと雄大はにこっと笑う。
「決まりだな」
「ちょっと待て」
雄大はタケルの手を自分の手を重ね歩き出す。

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