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赤い鴉

第4章 sunny

「綾瀬…お前」
担任の須藤がプリントを深刻な顔を見ている。
「はぁ…確かにウチは不良が多いし成績悪いのは多いがこのままだと留年確実だな」
「…マジ?」
「マジ…追試の成績次第ではどうしようもなくなるかも」
相当深刻な状況にタケルはうなだれる。毎日男に躰を狙われるせいで勉強ろくにしてないだけあって成績は最悪…これ以上大河に心配かけたくないタケルはなんとしても留年を回避したい。
タケルがぐるぐる考え込んでると控えめなノックが耳に入る。
「入ってくれ」
「失礼します
入って来たのはさらっとした黒髪に黒縁メガネの男…不良の多い学校でほぼひとりだけ優等生の九条 迅(クジョウ ジン)…成績は常にトップ、見かけによらず運動もできる方で体力テストもトップだった。
「九条…悪いが綾瀬の勉強の面倒を見てくれ」
「えぇ?」
「えぇ?…じゃないこのままだと夏休み補習に費やしても留年だ」
「待った、今の台詞だと夏休み補習ないと留年みたいな云い方はどういう意味だ」
聞き捨てならない須藤の台詞に慌て訊き返すが須藤は悲しそうにうつむいた。
「マジか…」
「まっ九条が勉強を見てくれるんだ、しっかりやれよ」
うなだれるタケルの肩を叩いて須藤は教室を出て行った。



「……ここはだな」
起伏のない声でひたすら淡々と勉強を教えられ居心地の悪さは最高潮に達した。
「おい、綾瀬」
「はいぃ!!」
「ぷっ…」
迅の声に過剰に反応したタケルを見て迅は吹き出した。
「いや、ビビり過ぎでちょっと可笑しくて」
なにがウケたのか知らないがとりあえず気まずい雰囲気が和らいだ。
「何か飲み物買って来るから休憩しよう?」
迅はそう云って教室を出て行った。緊張がほぐれ、疲れが押し寄せる。
穢れきった自分とは正反対の清廉潔白の迅…補習の件がなければ話す機会はなかっただろう。
「はい、緑茶で良いよね」
「うわぁ…」
ひっくり返らん勢いで驚くタケルに迅は複雑そうな顔をした。
「……そこまで驚くことないと思うんだけど?」
「ご、ごめん考えごとしてたから」
迅からペットボトルを受け取る。

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