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今日も明日も 2nd season

第9章 見えない鎖 part ⅩⅠ


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車に乗ってからも、かずくんは顔を俺の肩に埋めたまましがみついていた

俺はと言えば、お兄さんの言葉に怯えながらも引き寄せられるように足を進めたかずくんの姿が頭から離れてくれなくて


もしもあの時、俺じゃなくてお兄さんが先に腕を伸ばしたらどうなってたんだろうとか

あのまま俺が何もしなかったらかずくんはお兄さんのもとへ間違いなく行ったんだろうとか


今更考えても仕方ないけど、そんな事ばかりが頭に浮かんでは消えていく

怖いのに
離れたいのに

お兄さんの声はかずくんにしたら “絶対的“ な命令になってしまう


もしかしたらそれは洗脳みたいな感じ?


だとしたら

いくらあそこから離れていても
もしも電話番号を知られたとか、何かの接点があった場合

かずくんがそれに逆らえるとは思えない



「先輩…」

1人で抱えるにはあまりに大きすぎる不安に、助手席に座る先輩をつい呼んでしまった


「ん?どうした?」

ミラー越しでも、俺の不安な様子が伝わったらしい

すぐさま先輩はミラーではなく、直にこちらを振り返ってくれた


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