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愛するあなたよ、この手を離さないで

第1章 この手を離さないで


蒸し暑くて、風も吹いていない日。
エアコンも付いていないこの部屋は窓を開けないと涼むことがない。

私の身長が小さくて、窓を開ける鍵が届かなくて帰ってくるまでずっとこのままだった。

「ただいま」
「おかえりなさい」

「すまん、今日一日暑かったよな。ちゃんと飲み物飲んでたか?」

「うん、飲んでた。そんなに暑くなかったし、私は大丈夫だよ」

急いで窓を開けて部屋に篭った熱を外へ逃がしてくれる。

廉は私服へ着替えると、何やら買ってきた白い袋の中から小箱を取り出した。
金魚の絵が描いてある透明なガラス。
コップに似ているけど、真ん中に紐が通されている。

「これなあに?」

興味津々で聞くと、フフッと楽しそうに微笑んで窓際にそれを飾った。


チリリン……――

やんわりとした風が吹いて、謎のガラスの飾り物が涼しげな音を奏でる。

「これは風鈴って言うんだよ」

澄まされるような音が心の奥まで響く。
目を閉じてその音に聞き入った。

「莉音もこの音好きか?おれも好きなんだ、この音」

廉は私の頭を優しく撫でて笑った。
忘れられないくらい印象的な廉の幸せそうな顔。

気持ちのいい風が吹いて体は冷やされているのに、私の心はじわりと温かくなった。

満たされる空気に浸っていると、抱き寄せられてキスをされる。

「莉音、愛してるよ」


――――……

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