愛するあなたよ、この手を離さないで
第1章 この手を離さないで
『00:25』
残りの時間はどんどんと減っていく。
もう片方は『1』にならない。
……終わりだ。
あの思い出があっただけ、私の人生は幸せだった。
出来ることなら一目でもいいから、もう一度廉に会いたい。
でも出られないのだから、死んでから会いに行くしかない。
死を覚悟した私は膝を立てて座り俯いた。
またコツコツと足音がして、制服を来た男がやってくる。
そいつは私の檻の前で足を止めた。
遂にやってきた終わりの時――
今度は私の檻の扉が開いた。
「出ろ」
「…………」
「ほら、早く出ろ。もたもたするな」
罵声を浴びせていた制服の男はいつもより優しげなトーンで私に声を掛けた。
妙だ。いつもと違う。