笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
突然、翔くんの動きが止まって、黒目がちの大きな瞳がこちらに向けられる。
まさか、バレた?
慌てて顔を逸らす。
翔くんの吐息を耳元に感じて顔を上げると、熱っぽく見つめる目と目が合った。
翔「声……聞かせて?」
口を塞いでいた方の手が絡め取られ顔の脇に置かれる。
翔「カズのフリなんてしなくてもいいから。」
「え……?」
翔「騙すようなことしてごめん。」
宥めるようなキスが唇に降りてきてすぐに離れていく。
翔「でも、こうでもしなきゃ俺、おかしくなりそうで…」
「あ…あの…」
翔「初めて会った時からあなたのことが頭から離れないんだ。」
翔くんの大きな目の中には僕が映っている。
驚き、目を見開いている自分が。
そして恐らくは、僕の目の中にも翔くんが映っている。
熱っぽく、僕を見つめる翔くんの顔が。
翔「知っての通り、俺には恋人がいる。だからこんなこと、絶対に許されることじゃない。分かってる。分かってるけどもう、自分が押さえきれなくて…」
今にも泣き出しそうな目で僕に救いを求める。
翔「今だけでいい。俺だけのものになってよ。」
救いの手を差し伸べるように僕は、
彼の目蓋にキスを落とした。
苦しいのは…
僕だけじゃなかった。
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