笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
真夜中、ふと目を覚ますと隣にあるはずの温もりがないことに気付きその姿を探す。
翔くん、どこ?
明かりもつけずにあちこち探し回ること暫し、
締めてあるはずのベランダの窓から吹き込んでくる風で揺れるカーテンに気付き、足音を忍ばせ近づくと、
そこには携帯を見ながらため息をついている広い背中があった。
徐に顔を上げ、空を見つめる翔くんが吸っているタバコの煙が、
月も出ていない、星明りだけが頼りの暗い夜空に吸い込まれていく。
ゆっくりと、その背中が動いて翔くんが立ち上がる。
僕は慌ててベッドへと戻りシーツの中に潜り込んだ。
やがて足音を忍ばせベッドの中に翔くんが潜り込んできて、
僕を背中から抱きしめた。
「どこ行ってたの?」
翔「ごめん。起こしちゃった?」
「少し前から起きてた。」
翔「…そう。」
耳元で聞こえた君のため息に唇を噛みしめる。
「ねぇ…翔くん。」
翔「ん…?」
体を反転させ、翔くんの体を抱きしめた。
どこにも行かないで、って言おうとして、
言葉が喉の奥に引っ掛かって出てこなくて、
その、言葉の代わりに涙が頬を濡らした。
翔「何で泣いてんの?」
「ごめ……っ」
そう言って、抱きしめ返してくれる翔くんの腕の中はやっぱり温かくて、
そして、
とても優しかった。
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