笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
「背中…」
翔「背中?」
「さっきから気にしてるみたいだけど?」
翔「あ…ああ…少し痛痒くて…」
後ろを向いてもらうと、翔くんの背中に、三本の赤くて細い線があった。
「あっ!!ごめん、それ、って、もしかして僕がつけた…」
翔「道理で…」
切ろう切ろうと思いながら、ついつい忘れてしまう手指の爪。
でも、その跡は、
服を脱いだりしないと、到底見えない場所にあった。
翔くんと抱き合っている時に気づいたか…。
翔くんの、広い背中に纏わりつく、僕のではない、細くて白い腕が目の前にちらつく。
頭を振って追い払おうとしても、固く目を瞑っていてもその幻は、瞼の裏にはっきりとこびりついて離れてくれない。
むしろ僕を責め立てるように、色濃くはっきりと僕の胸の奥深くを抉りとる。
自業自得、ってことか…
翔「ごめん…俺、帰る。」
「あ…うん。」
ベッドから抜け出し、脱ぎ散らかした服を着込んでゆく。
その背中に色濃く残る僕の爪痕。
カズくんは、
どんな思いでその背中を見つめていたんだろう……。
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