笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
手を止め、ふと、窓の外に目をやると、
いつの間にか泣き出しそうな空が広がっていた。
フフッ。翔くんてば、雨男だったんだ。
潤と別れてからは雨の日は嫌いだった。
でも、今は違う。
雨は、好きな人を僕のところに連れてきてくれるから好き。
しばらくして、雨粒が窓に当たり始める。
そうしたら、ほら。
もうすぐ彼が、
雨に濡れた彼が息を切らして駆けてくる。
そして、窓の外で雨の雫を払い落としてそのドアをノックする。
僕は予め用意していた大きめのタオルを手にドアを開け彼を迎え入れる。
「いらっしゃい。はい、タオル。」
翔「…ありがと。」
遠慮がちに受け取り、翔くんは恐る恐る工房の中へと足を踏み入れる。
「今、温かいコーヒー淹れるから適当に座ってて?」
翔「…うん。」
翔くんは俯いたまま椅子を引き、ゆっくり腰かけた。
二人分のマグカップを手に戻ってきても未だタオルを被り俯いたままの翔くん。
マグカップを静かに作業台の上に置き、タオルで髪を拭いてあげると、体がぴくり、と動いた。
「あのね、実は昨日、カズくんに会ったんだ。」
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