笑い、滴り、装い、眠る。
第7章 雨の日は家にいて
翌日、チェックアウトを済ませ、僕の工房で扱うパーツの卸業者の元でいくつか材料を購入したあと、
その業者が持っている工房を借りた。
バッグの中から取り出した二対のストラップ。
僕は迷うことなくそれらを一つ一つばらしていき、『K』のイニシャルを彫った石を丁寧に脇に避ける。
そして、密かに持ち歩いていたもう一つの『S』のイニシャルを彫り込んだ石を取り出す。
割れないように、細心の注意を払いながら石の中心に通し穴を作ってゆく。
そして、完成したイニシャル入りの天然石を連結パーツで簡単に繋ぎあわせただけの、シンプルなストラップを完成させた。
もちろん、同じイニシャル入りのものを二つ。
そして、脇に置いた『K』のイニシャルが入った天然石は、忘れていった体でそのまま置いて工房を後にした。
後日、業者さんから連絡があったけど、処分してもらった。
帰りの新幹線の中。
久しぶりに翔くんにLINEする。
久しぶり、って言ってもたった1日ブランクがあっただけ。
それでも僕には、数日、いや、数週間、数ヵ月ぶりみたいに感じた。
数分後、僕の携帯に翔くんから返事がきた。
『必ず迎えに行く』と。
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