笑い、滴り、装い、眠る。
第8章 花梨―唯一の恋―
「翔、あれ。アイツを描け。」
翔「え?は、はい。」
翔を呼び寄せ、再びうとうとし始めたデブ猫を描かせた。
が、またしても…
「……やっぱ、ダメですよね?」
俺の横でちっちゃくなる翔。
うーん、なんと言うか…
猫……に見えねぇんだよなあ…
ここまで絵心ないんだったら、無理して絵の勉強しなくても…。
と、言いかけた時。
翔「あの…どこをどう直したらよくなりますか?」
「え?あ、ああ、そうだな?」
才能があるかどうか以前に、やる気あるじゃん?
「そうだな……影とか入れてみたら?」
翔「影……ですか?」
「うん。この場合、西日が射してるわけじゃん?だったら、この辺に影入れれば…」
翔「ああ、なるほど?」
「ね?大分違うでしょ?」
翔「ホントだ…スゴい。」
少し嬉しそうに笑った顔は、まだ高校生だけあってあどけなさが残る。
あれ?コイツ、確かテストが近いとか言ってなかったっけ?
「あのさ…さっき、テストがどうとか…」
翔「ヤバッ!!戻んなきゃ?」
すいません、と翔はペコリ、と頭を下げ、走り去っていった。
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