テキストサイズ

笑い、滴り、装い、眠る。

第8章 花梨―唯一の恋―



「何で俺だけなんだよ?何で姉ちゃんも一緒じゃないんだよ!」



愚図る俺を姉貴は抱きしめこう言った。



「ワガママ言わないで。お父さんとお母さんが天国から見てるよ」って。



そう。ガキの頃の俺は泣き虫で、両親の生前からいつも言われていた。



「智、男の子は女の子を守るもんなんだ。」



だから泣くな、って。



泣いてちゃお母さんやお姉ちゃんを守れないだろ?って?



「でも、一緒にいなかったら俺、姉ちゃんを守れないよ?


姉「泣き虫に守ってもらうほど弱虫じゃないからね?」


「なっ…何だよ?俺、泣き虫なんかじゃ……。」


姉「泣いてたじゃん?」

「泣いてねぇよ!!」


姉「じゃあ…ワガママ言わない?」


「……うん。」


姉「よし。」



スッゴい笑顔で、頭をグシャグシャ、って撫でられた。



「でも……姉ちゃんが一人ぼっちになっちゃう。」


姉「大丈夫。智が何処の家の子になろうが智は私の弟に違いないから?」



ね?って、今度はぎゅってしてくれたんだ。



結局、引き取り手が見つからなかった姉貴は中学を卒業すると同時に、



田舎に帰って家業を継ぐ、っていう職員さんについていって、そこの仕事を手伝いながら夜間の学校に通った。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ