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笑い、滴り、装い、眠る。

第8章 花梨―唯一の恋―



いつものように姉貴と話していると、申し訳なさそうに熊みたいな体の大きな若い男が病室にやって来た。



「智くん、いつも話の邪魔してるみたいでごめんね?」


「あ、いえ、全然。もう帰るつもりだったし?」



この体の大きな若い男は姉貴のダンナ。



姉貴は学校を卒業すると同時に、当時、同じ学校に通っていたこの人と結婚した。



姉「お仕事お疲れさま。」



仕事で疲れているであろう、姉貴のダンナのために椅子を明け渡す。



「いいよ、智くん。座ってても?ゆっくりしていったら?」


「いいって?」



恐縮しまくる姉貴のダンナの手を引いて強引に座らせる。



「悪いね、智くん。」


「いいって?それより、これ。」



受け取って?と、姉貴に突き返された茶封筒を握らせた。



「いや…これは……」



姉貴に助けを求めるみたいに姉貴を見るダンナさん。



「遠慮しないで?俺ら家族じゃん?」



また、彼が姉貴を見た時、



姉貴は困ったように笑いながら頷いた。



「で?お腹の赤ちゃんは順調?」


「順調ですって?」



そう言って笑った姉貴の頬は一段と痩け、顔色も良くない。



ホントは子供なんて産める体じゃないのに……



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