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笑い、滴り、装い、眠る。

第8章 花梨―唯一の恋―



久しぶりにこの家のシャワーを使ってバスルームから出ると、下ろし立てらしいバスタオルや下着、少し大きめのスエットの上下が置かれてあった。



それらを着込んで、さあ、これからどうしようかと、しばらく廊下をうろうろしていると、後ろから翔が声をかけてきた。



翔「あの…よかったら俺の部屋に。お茶も用意したんで。」


「じゃあ、そうしようかな?」



翔の後に続いて部屋に入っていくと、甘い香りが立ち込めていた。



翔「大野さん、甘いものが好き、って聞いてたし?」


「ふーん。」



色とりどりのマカロンを一個摘まんで口の中に放り込む。



一瞬で口の中で溶けて広がる上品な甘さに目を剥いた。



「おわっ!!なんだこれ?」


翔「ね?美味しいでしょ?」


「うん!」



でも、俺の甘い物好き、って、



一体誰から聞いたんだ?



翔「どうかしたんですか?」


「……のさ、聞いていい?」


翔「何を?」


「お前のアニキに聞いても教えてくんなかったんだよね?」


翔「……。」


「だからさ、聞いていい?」



翔の、カップを持つ手が微かに震えてるのが分かる。



「お前らさ、ホントの兄弟じゃないんだろ?」


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