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笑い、滴り、装い、眠る。

第8章 花梨―唯一の恋―



どんな風に絵を描いているのかが気になって、



俺は足音を忍ばせ翔の背後からスケッチブックを覗き込んだ。



「へぇ…随分とまともに絵を描けるようになってきたじゃないか?」



翔は慌てて身を乗り出し、スケッチブックを覆い隠した。



翔「おっ…脅かさないでよ?」


「そんなにびっくりすることねーじゃん?」



見せてみろ、と、翔からスケッチブックを奪い取る。



翔「あっ!!もー、返して!!」


「これ、もしかして花か?」



それは、白い紙面に描かれた薄紅の花びららしきもので分かった。



翔「もしかしなくてもそうだよ!!」



体格差で難なく奪い返されてしまう。



「上手くなったな?」


翔「ほんとに……?」


「初めて見た時に比べたら全然違うよ。」



翔はほんのり頬を染め俯いた。



翔「誉めてもらえるなんて思ってもみなかった。」


「だろうなあ。あんな平べったい猫の絵を見せられた時には正直、ここまで上達するなんて想像出来なかったよ。」


翔「平べったい…そんな言い方しなくても…」



一転してブーたれる翔の頭をわしゃわしゃと撫でた。



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