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笑い、滴り、装い、眠る。

第8章 花梨―唯一の恋―



「ん?い、いや、知らない。」



いきなり振られて、慌てて顔を逸らす。



翔「そう……」



教えてくれんのか、と、思ったら、スケッチブックやら画材やらをしまい始めた。



翔「もう行こっか?」



振り返ると、そこには園長先生と赤ん坊を抱いた姉貴が立っていた。



「懐かしいわね?そうやって二人並んでこの木の下に座っていると。」



園長先生の言葉に姉貴が笑顔で頷く。



「翔くん、て人見知りの激しい子だったから、あんなに長い間誰かと喋ってる姿なんて見たことなかったし、誰といるのか、と思ったら……。」


翔「なのに俺のこと、チビとか言うから。」


「しょうがないだろ?ホントにチビだったんだから?」


翔「そんなチビチビ言わないでよ?今度また言ったら…」



お仕置きだからね?って、悪い笑顔で小声で囁かれた。



「どうしたの、智。顔、赤いけど?」


「なっ、何でもねぇよ!!」



姉貴のツッコミから逃げるみたいにして、タクシーに乗り込んだ。



後を追うみたいに俺の隣に座った翔がぽつり耳元で囁く。



翔「唯一の恋。」


「は?」


翔「花言葉だよ?花梨の。」



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