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笑い、滴り、装い、眠る。

第16章 a little guy



「大野くん、見なかった?」



大判狂わせを期待していたレースは結局、落ち着くところで落ち着いてしまった。



あと少しで、ってところだったけど。



賑やかなグランドとは対照的に静まり返った校舎内をあちこち見て回り、校舎裏へも足を運んだ。



だが、見当たらない。



どこか見落としがあったかもしれない、と踵を返した時、微かに啜り泣くような声が聞こえた。



大野くん?



さっきの道のりを隈無く探す。



すると、立てた両膝の間に顔を埋める体操服姿の小さな影が目に止まった。



俺は静かに近づき、隣に腰かけ彼に語りかけた。



「いつから行けばいいかな?」



啜り泣く声がピタリと止みゆっくりと大野くんが顔を上げた。



「お母さんにちゃんと伝えておいてね?また、お伺いします、って?」



涙でぐちゃぐちゃな顔で俺を見る大野くんの頭を撫でる。



智「櫻井さん…僕…」


「ゴール前で転んじゃったのは残念だったけど、ちゃんと最後まで走ったから。」



俺は松本に持たされた絆創膏を大野くんの膝に貼り付けた。



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