笑い、滴り、装い、眠る。
第16章 a little guy
驚いて顔を上げると、櫻井さんに頭をぽんぽんされていた。
翔「何だよ?泣いてんのか?」
今度は頭をグシャグシャにしながら顔を覗き込んできて笑った。
「だって…」
ずずっと思いっきり鼻を啜る。
翔「俺の受験が終わったらまた来るよ?」
その言葉によって、無彩色に見えた目の前の景色に色が帯びていく。
翔「あるだろ?君の高校受験が?」
顔をあげた僕と櫻井さんの視線がかち合う。
翔「後で君のお母さんに話そうと思ってて?だから……」
僕の顔を見た櫻井さんの目が真ん丸になる。
翔「ちょっと泣きすぎだろ?顔ぐちゃぐちゃじゃん?」
「そんなこと言ったって…」
安心したのと、嬉しかったのとが合わさって、
涙が止まらなくなってしまった。
翔「もう泣くな。」
こんな僕をこのまま家に送り届けたら何言われるか分からないと践んだんだろう。
櫻井さんは近くの公園に立ち寄り、街灯に照らされたベンチに座らせた。
翔「ようは、さ、もうしばらくはお願いします、ってことだから。」
心配させてゴメンと何度も謝ってきた。
落ち着いた僕を送り届けた後もこちらを気にしながら、櫻井さんは帰っていった。
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