笑い、滴り、装い、眠る。
第16章 a little guy
智「あの…櫻井さん?」
「ん?」
いきなり立ち止まって俺の名を呼ぶ。
智「あの…ホントにつれてってくれるんですよね?」
「ああ、さっきの話?もちろん、いいよ?ただし……」
少し背が伸びた大野くんの頭をぽんぽんした。
「合格したらだぞ?」
智「分かってます!」
「頼もしいな?」
智「だって…楽しみにしてたから…」
って、頬を染めて、伏し目がちに言うもんだから、
……ちょっとドキッとした。
ちょっとじゃねぇ。
全身、心臓になったみたいにドキドキが耳に、じゃなくて、直接頭に伝わってくる。
はあ、もう、いっそのこと付き合おう、って言おうかな?
でもなあ。現状、大学生×中学生だもんなあ。
俺、犯罪者だよ。
いや……待てよ?俺まだ成人してないし、子供同士か?
とは言え、年上だから一応保護者?
仮に手を出したら青少年育成条令?とか、ってやつに抵触するのかな?
……いかんいかん。
大野くんとどうにかなった前提に考えてる。
でも、どうにかなる、って言っても……
首を傾げたまま見上げる大野くんの、少し尖らせたような唇に目がいく。
智「どうかしたんですか?」
「あっ…い、いや、別に?」
あ、あっぶね。
一瞬、ヤバい考えが過った頭をリセットしようと、ぶんぶんと左右に振った。
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