笑い、滴り、装い、眠る。
第16章 a little guy
唇が離れて、恥ずかしそうに俯く智くんの手を取り立ち上がる。
「……行こっか?」
智「……うん。」
智くんの手を引き寝室のベッドに座らせた。
そして、
少し震えている手を握り直して言った。
「無理……してない?」
智くんはちょっと泣きそうな顔でぶんぶんと首を左右に振った。
俺は智くんの気持ちを落ち着かせるため、俺の気持ちをも落ち着かせるために、
握る手に力を込めた。
智「翔くん、僕ね?ずっと翔くんのことが好きだったの。」
「……うん。」
智「でもね、こんなこと翔くんが知ったら迷惑するだろうな?って、ずっと黙っているつもりでいたの。」
「……そっか。」
智「でも、いいのかなあ?」
「何が?」
智「翔くんの方こそ無理してない?」
「何で?」
智「可愛い女の子が相手じゃないのに?」
目を伏せ自信なさげに喋っていたと思ったら、急にくしゃりとした顔になって、大きなくしゃみをかました。
慌てて俺の羽織っていたカーディガンを智くんに羽織らせる。
「ごめん。寒かったよな?気が利かなくて。」
智「ううん?」
にっこり微笑むと、智くんは体を預けるように俺に凭れ掛かってきた。
智「もし、悪いと思ってんなら温めてよ?」
「……。」
そうか…君は小悪魔のほうだったか。
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